Accipiter Volume 24 (2019)

原著論文

農作業にともなう戦場ヶ原におけるムクドリの地域個体群の変遷

 平野敏明・笠原猛

高層湿原からなる栃木県日光市戦場ヶ原では、ムクドリSpodiopsar cineraceusは少なくとも1950年代末から繁殖するようになった。しかし、近年になって、戦場ヶ原のムクドリの繁殖期の生息状況が悪化したように思われた。そこで、同地におけるムクドリの繁殖期の生息状況を、過去のセンサス結果と比較するために2018年の繁殖期に3か所でラインセンサスを実施した。その結果、2018年の繁殖期には、3か所の調査地ともまったく生息を確認できなかった。過去の調査結果から、この地域ではムクドリは2010年代になって記録されなくなったことがわかった。この生息状況の変化は、隣接する農地の拡大にともなって生息していたムクドリが、農地における農作業の時期的変化によって本種の繁殖期の採食環境が悪化したことから調査地に生息しなくなったと考えられた。

 

那須野が原の箒川河川敷における標識調査報告(2006-2018年)

河地辰彦

栃木県那須野が原箒川河川敷において、2006-2018年までの13年間にカスミ網を用いた標識調査で51種、4248羽を捕獲して放鳥した。全捕獲数の75%は上位からホオジロ、オオヨシキリ、カシラダカ、オオジュリン、アオジ、スズメ、ノゴマ、ツバメの8種で占めた。ホオジロ類3種の捕獲数の経年変化を調べたところ、カシラダカとオオジュリンの2種は年によって変動は見られるものの長期的な増減傾向は見られなかった。一方、アオジについては減少傾向にあった。他所との再捕獲記録の中には、県内の渡良瀬遊水地とのつながりを示すオオジュリンの記録が3件あった。また、東北・北海道方面からコヨシキリ、ノゴマ、オオジュリンの記録が6件あった。本調査地における長期経過後の回収例では、9年以上生存するアオジがいたが、経過年数が5年以上の個体は稀だった。本調査地で繁殖・越冬あるいは通過する8種について捕獲期間と暦日別捕獲数を示し渡りの生態について考察した。本調査によって野鳥の目視観察では見逃されてしまう潜行性の鳥類を多く捕獲し、ホオジロ類が多く越冬していることも確認できた。本調査地のような小規模な河川敷草原でも冬鳥の越冬や渡り鳥の中継地として重要な場所であることが証明された。

 

渡良瀬遊水地における標識調査報告(2017)

山口恭弘・吉田邦雄・木村裕一・河地辰彦・市川洋子・人見潤

渡良瀬遊水地で実施している鳥類標識調査において、2017年は39種2,500羽が新放鳥され、16種190羽が再捕獲された。100羽以上新放鳥された優占種は、カワラヒワ、アオジ、オオジュリンの3種であった。過去27年の平均と比較すると、カシラダカが非常に少なく、アオジが平年並み、オオジュリンがやや少なかった。尾羽異常を16種で調べたところ、6種で確認された。

 

栃木県におけるガビチョウとカオジロガビチョウの生息分布

佐藤一博・手塚功・平野敏明

外国産鳥類のガビチョウとカオジロガビチョウの栃木県における生息分布および分布拡大の推移を明らかにするために、聞き取り調査と資料調査を実施した。その結果、2000年以降2019年7月末までに、ガビチョウの記録は合計241例、カオジロガビチョウ合計45例が得られた。標高別の記録例数は、ガビチョウでは500m以下の平野部から低山帯が最も多く、1001m以上の山岳地域は著しく少なかった。一方、カオジロガビチョウは100m以下の地域がほとんどであった。ガビチョウは、2000年代初期に栃木県の東部で新たに記録されて以降、約20年でほぼ全域に広がった。一方、カオジロガビチョウは2005年に初めて記録されたが、栃木県南部の限られた地域に生息していた。また、栃木県南部では両種が同所的に生息していた。これら2種は、隣接する県から栃木県へ分布を拡大したと推測された。すなわち、ガビチョウは茨城県や福島県、群馬県、カオジロガビチョウは群馬県である。両種の生息分布の変化や種間関係を明らかにするために、さらに継続した調査が必要と考えられた。

 

観察記録

栃木県におけるヨーロッパコマドリの初めての記録

小堀脩男・小堀寿文

2019年2月20日から3月13日にかけて栃木県鹿沼市の山林にて性別不明のヨーロッパコマドリ1羽が記録された。

 

栃木県における亜種リュウキュウサンショウクイの記録

平野敏明・戸室由美

近年、日本における生息分布が拡大している亜種リュウキュウサンショウクイ1羽が、2019年11月4、6日に栃木県宇都宮市の都市公園で記録された。

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