野鳥への給餌の考え方

『野鳥』2001年8月号

 

考えよう!ひろめよう!フィールドマナー   その11 給餌でも気をつけよう

 

  野鳥との接し方のひとつである給餌は、それを楽しみとする方がいらっしゃる一方で、近年ではマイナス面を危惧する意見も聞かれます。今回は給餌の問題について考えます。

 

き:気をつけよう、写真、給餌、人への迷惑

    (これまでの標語は「着るものにも一工夫」)

 

  撮影が、野生生物や周囲の自然に悪影響を及ぼす場合もあるので、対象の生物や周囲の環境をよく理解した上で影響がないようつとめましょう。餌を与える行為も、カラスやハトのように人の生活と軋轢が生じている生物、生態系に影響を与えている移入種、水質悪化が指摘されている場所などでは控える必要があります。また、写真撮影や給餌、観察が地元の人や周囲の人に誤解やストレスを与える場合もあるので、十分な配慮をしましょう。

 

●給餌のプラス面

  野鳥にとってのプラスとしては、人間による給餌がタンチョウを絶滅の危機から救うことに貢献した例が挙げられます。

  人にとって、特に小さな子どもたちや、病気や障害をお持ちの方にとっては、野生生物と身近に親しむことによる喜びは、無視できないほど大きいものがあると思います。冬の期間、餌台を用意して庭やベランダに野鳥を呼んで楽しむ方も多いことでしょう 。

 

●給餌のマイナス面

  給餌することによる野鳥や生態系へのマイナスについてはあまり調べられていないのですが、自然界にない餌が野鳥の健康や周囲の環境を害したり、本来その地域にはない植物の種子や昆虫などをえさにすることで、生態系に影響を与えることもあるかもしれません。給餌の量や給餌する人の数が多い場合にも影響が予想されます。すでに、水鳥への給餌による水質悪化が懸念されている湖沼もあります。

  人と野生生物との関係にも悪影響が見られます。人が野鳥に与える餌に来る種や個体は限られているため、特定の種だけが増えてバランスを損なったり、人との軋轢を増加させる恐れがあります。また、サルやクマなどほ乳類への給餌では農業被害の他、人を恐れなくなる危険も指摘されており、実際に人里に降りてきて射殺される悲劇にもつながっています。近年では、条例によって給餌を禁止する自治体も出てきました。 

 

●どんな点に気をつけたらよいか?

  当会は個人の楽しみを否定する立場ではありませんが、増えすぎたとして問題視されているドバトやハシブトガラスなどの種や移入種への給餌は、自然保護の立場からは控えた方がよいと考えられます。個人の庭での給餌の場合でも、「自然界で餌の乏しい冬に限った方がよい」とか「隣人への迷惑に気を付けよう(騒音やフン害など)」ということはよく言われるところです。命を慈しむことは自然に関心を持つことになる一方で、様々な命がつながっている自然の仕組みを無視しては自然保護とは言えません。目の前の一羽だけでなく、生態系や環境のことにまで視点を広げて考えるようにしたいものです。