Accipiter Volume 12 (2006)

論文

宇都宮市田川における長期モニタリングによる水辺性鳥類の出現個体数の変化  樋口 弘

1993年1月から2005年12月までの13年間、栃木県宇都宮市の住宅地密集地を流れる田川5kmで、毎月1回、水辺性鳥類のラインセンサスを実施した。その結果、合計27種の水辺性鳥類が記録された。これらの種は、調査期間を通して毎回記録された種、途中から新たに記録されるようになった種、途中から記録されなくなった種がいた。また、主要な17種の個体数を1990年代と2000年代にわけて比較したところ、変化が認められた種があった。カワウ、ササゴイ、ダイサギ、コガモの4種は有意に増加し、ゴイサギ、コサギ、オナガガモ、イソシギ、キセキレイの5種は有意に減少した。このうち、カワウは栃木県における分布拡大と個体数の増加が、その理由と考えられたが、他の種の変化の理由はよく分からなかった。

 

栃木県におけるケリの繁殖状況と繁殖環境(2004)  平野敏明・河地辰彦・君島昌夫・小堀政一郎・小堀脩男・志賀陽一

2004年4月から6月にかけて、栃木県におけるケリの繁殖個体数、繁殖環境の調査を行なった。その結果、6か所で合計38羽の成鳥と少なくとも15羽のヒナを確認した。繁殖環境は農耕地と牧草地が各1か所、工業団地4か所であった。過去の文献と比較すると、記録された成鳥の数に著しい違いはないが、繁殖地は農耕地から工業団地へ拡大した。成鳥の数は、工業団地と農耕地で大きな違いはなかったが、ヒナの数は工業団地が観察された全ヒナの93.3%を占め、明らかに工業団地のほうが著しく多かった。農耕地における低い繁殖成績は農作業による繁殖妨害のためによるものであった。今後、工業団地も空き地がなくなるとケリは繁殖できなくなるので、農耕地における繁殖地保護が重要と考えられる。

 

渡良瀬遊水地における標識調査報告(2005)  深井宣男・吉田邦雄・山口恭弘・人見潤・坂口斉・木村裕一・市川洋子

渡良瀬遊水地で実施したカスミ網による標識調査の結果、2005年には新放鳥43種1573羽、再放鳥13種88羽、合計43種1661羽が標識放鳥された。新放鳥の優占種は、オオジュリン(全体の34.8%)、ツバメ(同17.6%)、コヨシキリ(同11.4%)、カシラダカ(同8.2%)であった。

 

渡良瀬遊水地における標識調査報告(1990-2005)  深井宣男・坂口斉・人見潤・木村裕一・吉田邦雄・山口恭弘・市川洋子

1990年から2005年の16年間に実施した渡良瀬遊水地における標識調査の結果を用いて、ホオジロ類や夜行性鳥類(コノハズク、オオコノハズク、アオバズク、ヨタカ)、潜行性鳥類(ノゴマ、コヨシキリ、オオヨシキリ)の秋期の渡来時期を解析した。その結果、渡来時期のピークは種によって異なっていることが分かった。

短報

ハヤブサは魚が嫌い? 小堀脩男・平野敏明

ミヤマガラスがくわえていた魚を、ハヤブサの若鳥が追いかけて奪ったが、ハヤブサは突いただけで摂食しなかった。

観察記録

藤原町におけるシノリガモの観察について  益子直樹

栃木県北部における2005年野鳥観察記録報告  河地辰彦

日光市鶏頂山におけるアカモズの観察記録  佐藤一博

ツバメ同士の空中衝突によると考えられる死亡例  小堀脩男