Accipiter Volume 21 (2015)

論文

渡良瀬遊水地における標識調査報告(2014)

山口恭弘,人見 潤,河地辰彦,木村裕一,市川洋子,吉田邦雄

渡良瀬遊水地で実施している鳥類標識調査において,2014年は31種867羽が新放鳥され,12種37羽が再捕獲された.また,渡良瀬で新放鳥し2014年に他所で再捕獲された個体がオオジュリンで23例あった.100羽以上新放鳥された優占種は,アオジとオオジュリンであった.過去10年の平均と比較すると,アオジが多く,カシラダカとオオジュリンが少なかった.尾羽異常を調べたところ,カシラダカで3.7%(27羽中1羽),オオジュリンで29.7%(118羽中35羽)で確認されたが,ホオジロ(3羽)とアオジ(18羽)では確認されなかった.

 

宇都宮市の孤立した運動公園緑地における鳥類の生息状況の季節変動(2001年~2014年)樋口弘

2001 年から 2014 年までの 14 年間に,栃木県宇都宮市の市街地にある栃木県総合運動公園で鳥類の生息状況の季節変化を調査した.調査地は各種のスポーツ施設のほか小規模な緑地からなっている.調査は,毎年春,夏,秋,冬の各季に 1 回実施した. 14年間に記録された種は 33種であった.季節ごとの記録種数は,冬季に最も多く,夏季に最も少なかった.出現率が高い主要な種はカルガモ,キジバト,オナガ,ハシブトガラス,ヒヨドリ,ムクドリ,スズメ,ハクセキレイの 8 種であった.これらの種は都市環境に生息する留鳥であったが,季節的な出現率は種によって異なっていた.カルガモ,キジバト,ハシブトガラス,ヒヨドリは四季を通して出現率が高かったが,オナガ,ムクドリ,スズメ,ハクセキレイの 4 種は季節によって出現率が低かった.このような季節ごとの出現率の変動は,それぞれの種の採食環境や社会行動の季節変化,渡りなどが要因となっていると推測された.

 

短報

足利市の住宅地におけるコムクドリの繁殖について  田米開隆男

従来,栃木県では県の北西部で繁殖が確認されていたコムクドリが,2015年4月下旬から6月にかけて,足利市の住宅街でひとつがいが繁殖し,少なくとも4羽のヒナを巣立ちさせた.この地域には,他にも繁殖つがいがいることが示唆された.

 

サシバの貯食行動の観察  平野敏明

1999年4月20日,栃木県栃木市の渡良瀬遊水地でサシバ雌が雄から給餌された体長約7㎝の種不明のカエルを摂食せずに,木の枝に貯蔵した.さらに,同所では2000年の4月9日に,雄が体長約7㎝の種不明のカエルを捕え,雌に与えるために営巣林へ戻ってきたが,雌が不在だったため,樹木の枝に押し付けるように置くのが観察された.前者では,貯蔵されたカエルは摂食されなかったが,後者では約30分後に雌雄で営巣林に戻り,貯蔵しておいたカエルを雄が取り出して雌に与えた.雌はただちに摂食した.これらの貯蔵行動は,2例とも繁殖ステージの初期に行われた.

 

シラガホオジロの栃木県における日光地域以外からの初記録  河地辰彦

シラガホオジロは,従来,栃木県では奥日光の戦場ヶ原で記録されていた.ところが,栃木県北部の大田原市の箒川河川敷で標識調査中に,2014年11月28日に第1回冬羽幼鳥1羽を捕獲標識した.本記録は,シラガホオジロの栃木県における日光市以外からの初記録である.

 

栃木県におけるアカハシハジロの観察記録  吉沢雅宏

2014年12月6日から30日にかけて,アカハシハジロの雄1羽が栃木県大田原市の羽田沼と同市黒羽向町の那珂川で記録された.本記録は,栃木県における初めてのアカハシハジロの記録である.

 

観察記録

2年連続で同じ場所へ飛来した特異な眉班のツグミについて  平野敏明

栃木県におけるムジセッカの初めての越冬記録  内田孝男