Accipiter Volume 27・28合併号(2023)

原著論文

 

渡良瀬遊水地におけるコチョウゲンボウの越冬個体数

平野敏明・野中 純・鈴木由清

栃木県南部の渡良瀬遊水地一帯で越冬するコチョウゲンボウの個体数の変動を明らかにするために、1990年代後半に調査した同じ場所で2019-2021年に再び就塒前に集まったコチョウゲンボウの個体数を調査した。その結果、コチョウゲンボウの個体数は1990年代後半には12.33±3.20羽(平均±SD, N=6)、2019-2021年冬期には8.92±4.37羽(平均±SD、N=13)が記録され、両年代で有意な違いは得られなかった。しかし、後者では個体数は調査年で有意に異なっており、2021年冬は2019年および2020年より有意に少なかった。本調査では詳しい就塒場所は分からなかったが、コチョウゲンボウは長期にわたって同じ一帯を就塒前集合に利用した。そのため就塒前集合での観察は、本種の越冬個体数の長期にわたったモニタリングが可能と思われた。

報告

渡良瀬遊水地における標識調査報告(2021)

山口恭弘・木村裕一・吉田邦雄・市川洋子・人見潤

渡良瀬遊水地で実施している鳥類標識調査において、2021年は50種4,505羽が新放鳥され、13種203羽が再捕獲された。100羽以上新放鳥された優占種は、コヨシキリ、アオジ、オオジュリンの3種であった。過去31年の平均と比較すると、カシラダカが非常に少なく、アオジが平年並み、オオジュリンが約2倍と多かった。尾羽異常を34種で調べたところ、13種で確認された。

 

渡良瀬遊水地における標識調査報告(2022)

山口恭弘・木村裕一・吉田邦雄・市川洋子・人見 潤

渡良瀬遊水地で実施している鳥類標識調査において、2022年は47種1,857羽が新放鳥され、18種192羽が再捕獲された。100羽以上新放鳥された優占種は、コヨシキリ、アオジ、オオジュリンの3種であった。過去32年の平均と比較すると、カシラダカが非常に少なく、アオジが約2倍と多く、オオジュリンが少なかった。尾羽異常を24種で調べたところ、7種で確認された。

観察記録

栃木県におけるカンムリカイツブリの初めての繁殖記録

小網静香

カンムリカイツブリは栃木県には冬鳥として飛来するが、2023年6月から11月にかけてひとつがいが同県芳賀町の洪水対策用の遊水池で営巣し3羽のヒナが巣立ちした。本記録は栃木県における本種の初めての繁殖例である。

 

栃木県におけるクロハゲワシの初記録

野中純

日本へは稀に飛来するクロハゲワシAegypius monachus 1羽が、2022年12月9日に栃木県那須塩原市の山岳地の森林地帯において目視・観察された。本記録は栃木県での初めての観察記録である。

 

日光市の低山で観察されたキバシリ

加藤美奈子

キバシリは、栃木県ではおもに山地の森林に生息・繁殖するが、2022年6月18日に日光市文挾の標高約280mのスギなどからなる森林で1羽が観察された。